細胞組織電気トモグラフィによるオルガノイドイメージング
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- 研究責任者
川嶋 大介 助教 / Daisuke KAWASHIMA
- 所属
千葉大学 大学院工学研究院
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- 研究責任者
医療・創薬分野への応用を視野に入れ、極めて低侵襲かつラベルフリーな電気トモグラフィ(ET)技術の研究を進めています。ET技術は、物体の周囲で電気的な計測(インピーダンスやキャパシタンスなど)を行い、それに基づいて逆問題解析を用いて物体内部の電気物性をイメージングする手法です。本研究では、ET技術を活用し、細胞や組織の種類や状態によって変化する電気物性を捉えることで、がん細胞の識別や臓器・病変の可視化を目指しています。また、膜貫通型タンパク質であるイオンチャネルの活性や阻害によって生じる細胞内外のイオン輸送に着目した細胞計測にも応用しています。ET技術を利用した画像化に加え、電気インピーダンス・スペクトル解析、および細胞計測用のPCB基板ベースのセンサーを組み合わせた独自の計測技術を提案しています。この技術により、創薬における動物実験の前段階として、より実際の生体に近い形で実験を実施でき、かつハイスループット性を持つ評価システムの確立を目指しています。これにより、創薬プロセスの効率化や新薬開発の加速が期待されます。
さらに、医療・創薬分野に加えて、電池やプラント産業におけるスラリー工程の可視化にも焦点を当てています。スラリーとは、固体微粒子が液体中に分散した混合物であり、リチウムイオン電池の電極材料製造や化学プラントでの原料輸送など、さまざまな産業プロセスにおいて重要な役割を果たしています。スラリーの均一な分散や粒子の凝集は、製品性能に大きな影響を与えるため、その内部挙動の可視化はプロセスの最適化に不可欠です。ET技術を用いることで、スラリー内部の電気物性の変化を捉え、分散状態や凝集の動態をリアルタイムで解析することが可能です。これにより、従来の光学的手法では観察が難しいスラリー内部の挙動を非侵襲的に把握し、製造プロセスの品質管理や効率向上を支援します。スラリー工程の可視化技術は、電池材料の均一性向上やプラントの稼働効率化に貢献し、産業全体の持続可能性の向上にも寄与することが期待されています。