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学際的先端研究支援プログラム

有機半導体の新規電子物性発現を目指した電荷-フォノン相互作用の解明

吉田 弘幸
  • 研究責任者

    吉田 弘幸 教授 / Hiroyuki YOSHIDA

  • 所属

    千葉大学 大学院工学研究院

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    ORCID ID

電化製品を動かすために重要な役割を担っている半導体は、テレビ、スマートフォンなどの身の回りの様々な電化製品に組み込まれています。この半導体の代表的な材料はシリコンやゲルマニウム、ガリウムヒ素など硬く重いため、製品の形に制限があります。また、真空を使った排出エネルギーの多い高コストな製造プロセスが必要です。そこで現在、軽く、柔らかい特徴をもつ有機物の特長を生かした有機半導体が注目されています。すでに有機ELが高品質ディスプレイとして普及しています。さらに、紙よりも薄い太陽電池やウェアラブル機器など、これまでにないデバイスを実現できる次世代半導体です。
半導体というのは、バンドギャップをもつ物質であり、電気を中途半端に流し、光を発生させたり光を電気に変えたりします。一般に有機物は電気絶縁体ですから、有機半導体は電気伝導性を示す非常に特殊な物質と言えます。そのため、これまでの半導体研究で培われてきた標準的な理論が通用しません。有機半導体では、電荷が分子を変形させながら伝導していくことは予想されていますが、研究は極めて難しく、詳しいことはわかっていません。そのようなことからブレークスルーとなる新たな実験手法が求められていました。

研究推進リーダーである吉田は、10年以上の歳月をかけて「角度分解低エネルギー逆光電子分光」という技術を開発し、これまで誰も観測できなかった電荷の運動量とエネルギーの関係を表す伝導帯の「バンド構造」の測定に世界で初めて成功しました。バンド構造がわかると、電荷がどれだけ分子を変形させるのか、どれだけ流れやすいかの根本的な理解が可能になります。

本研究では、角度分解低エネルギー逆光電子分光をさらに高性能化することで、より精密なバンド構造の観測し、本来絶縁体である有機半導体がどうして電気が流れるのか、どうやって流れるのかという有機半導体の長年の難問題を解決し、有機半導体の電子伝導機構の標準的な理論を確立させます。これに成功すれば、これまでの有機半導体の限界を超えたデバイスを提案できるかもしれません。たとえば、人間の体温で発電する高性能熱電変換素子や消費電力の少ないトランジスタやセンサーが可能になるでしょう。印刷技術を使って安価に大量生産できる太陽電池や表示装置などもできます。これらを組み合わせれば、電池の要らない軽量ウェアラブル機器など、これまでの電子機器の概念を変える電化製品が可能になり、CO2排出削減にも貢献できます。

有機半導体の新規電子物性発現を目指した電荷-フォノン相互作用の解明
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吉田 弘幸 教授の 記事 / ニュースリリース