MENU

学際的先端研究支援プログラム

ニュートリノが拓くマルチメッセンジャー天文学研究拠点形成

吉田 滋
  • 研究責任者

    吉田 滋 教授 / Shigeru YOSHIDA

  • 所属

    千葉大学 ハドロン宇宙国際研究センター

  • Researchmap


    ORCID ID

宇宙には、光のスピードで降り注ぐ、物理学の言葉で言うならば「エネルギーの高い」物質の束が存在しています。その大半は物質の基本構成要素である陽子や原子核で、それは宇宙線と呼ばれています。 この中には、目に見える光(可視光)に比べて1000兆倍以上もエネルギーの高いものがあります。

いわば極限宇宙の産物とも言えるこの宇宙線はどのように作り出されたのでしょう?
ハドロン宇宙国際研究センター(IceHap)は、この宇宙物理学上最大の謎を解き明かすことを研究ミッションとして掲げています。
その具体的手段として、素粒子の一つである「ニュートリノ」を捉えることで極限高エネルギー宇宙の現場を調べる手法を用います。
これが「ニュートリノ天文学」と呼ばれる21世紀の新しい天文学です。
しかし宇宙ニュートリノの検出は非常に困難でした。
めったに物質と衝突することなく貫通力が高いニュートリノの性質は宇宙探査には極めて有用ですが、その性質ゆえに、検出器を作っても大半のニュートリノは痕跡を残さず素通りしてしまいます。
存在したとしても、希少な高エネルギーニュートリノが稀に残す痕跡を捉えるには巨大な体積を持つ検出器が必要とされるのです。
この問題を乗り越えるために、南極大陸にある氷河を検出体に使おうという野心的な発想が生まれ、国際共同実験「IceCube」プロジェクトがスタートしました。
IceHap は2002年のプロジェクト発足時から、日本からの唯一の主要メンバーとして、また、ニュートリノ天文学を推進するわが国唯一の基幹研究機関として、高ネルギー宇宙ニュートリノの発見を始めとした時代を画する数々の成果を達成してきました。
今後は、複数の (=マルチ) 宇宙からの使者 (=メッセンジャー) の観測とデータ解析を行うという意味で、「マルチメッセンジャー天文学」と呼ばれる手法の世界的な中核研究機関として飛躍しようというのがIceHapの将来戦略です。
本研究プログラムではそのための骨格作りを目的に以下を行い、まだわかっていない宇宙の謎の解明に迫ります。

  1. ニュートリノ観測能力の大幅な向上を実現する将来実験 (IceCube-Gen2) の開発研究を支えるインフラストラクチャーと国際的な研究チームの構築
  2. マルチメッセンジャー天文学を推進する学際的な研究チームの構築
  3. これらの研究成果を積極的に社会に発信し、千葉大学のブランド力向上にもつながるアウトリーチ活動の展開


©IceCube Collaboration

南極の冬期の極夜の時期に撮られた1枚です。 そびえたつIceCube実験の制御室とその頭上には、たくさんの星と天の川、そしてその横にイリジウムフレア(衛星フレア)もきれいに光っています。


©IceCube Collaboration

南極点にそびえたつIceCube実験の制御室の写真になります。
氷河中には、5,160台のDOM光検出器が埋設されており、その氷上に建てられたこの制御室は各検出器とケーブルで繋がっています。
制御室の左右に立つ柱の中をケーブルが通り、検出されたデータの収集や電力供給が行われます。
どちらの写真も1年を通して現地の実験サイトに滞在しているIceCubeの越冬隊によって撮影された写真です。
南極点には夏季にあたる11月~2月の間以外は飛行機での行き来ができないので、2名の越冬隊はほぼ1年現地に滞在し、機材などのメンテナンスを担当します。
極夜やオーロラなどは夏季には体験できないので、越冬隊ならではの特権といえます。

吉田 滋 教授の 記事 / ニュースリリース