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社会価値創造研究支援プログラム

超音波病理学の創生と非侵襲マルチスケール定量診断法の確立

山口 匡
  • 研究責任者

    山口 匡 教授 / Tadashi YAMAGUCHI

  • 所属

    千葉大学 フロンティア医工学センター / 大学院工学研究院

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    ORCID ID

がんなどによる体内組織の変化の程度や各種の疾患の進行度などを理解するために、血液検査や画像診断、針で体内の対象組織を摘出して顕微鏡で観察する病理検査が行われます。それぞれの検査には利点と欠点がありますが、患者さんの心や身体への負担が少なくないため、簡易かつ診断精度の高い診断法の確立が求められています。

そこで本研究では、物質の硬さや形状などをリアルタイムで評価することに長けた超音波の能力を最大限に引き出して活用することで、体内の生体組織の「生きた細胞の性質」や「構造・組成と性質や状態(性状)の関係性」等を微視的(ミクロ)かつ巨視的(マクロ)に評価して、既存の検査では理解できない生体組織の物理的な特性と、医学的観点から見た性状との関係性をマルチスケールで直接的に結びつけることが可能な定量診断法「切らない病理検査」を実現します。つまり、超音波で体外から診断の対象組織を観察するだけで、針で取り出した細胞の状態評価と同じ結果を得ることや、発がんリスクなどの予測などが非侵襲・非観血で可能になるということです。

この「切らない病理検査」の技術は診断のみでなく、手術前後の対象組織の状態確認はもちろんのこと、手術中でもリアルタイム性状評価によって安全性や精度の向上につながります。また、本技術によって検査を受ける頻度が減ることで、患者さんはもちろんのこと、臨床現場で働く医師や技師などの負担も減り、医療費コストが低減されます。

本研究の推進によって得られる、多様な状態にある生体組織の性状と音響特性・機械特性・生化学特性などを集積した総合生体物性データベースは、「超音波病理学」という新しい学問体系を作り出すとともに、CTやMRIなどの各種の医用画像診断にも適用可能なバイオマーカ(生物学的・病理学的な変化や状態、治療による効果などの指標)となり、装置や設定などの条件に依存しない「画像診断の標準化」にも大いに貢献します。

超音波病理学の創生と非侵襲マルチスケール定量診断法の確立
散乱体構造のリアルタイム評価
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NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)肝臓の細胞レベルでの音響特性評価
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腎臓のマルチスケール音速評価
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