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若手研究支援プログラム(J-PEAKS)

地域間不平等と地域内不平等の寄与度分析のための統計手法開発

川久保 友超
  • 研究責任者

    川久保 友超 准教授 / Yuki KAWAKUBO

  • 所属

    千葉大学 大学院社会科学研究院

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    ORCID ID

本研究は、一般化エントロピー(generalized entropy, GE)と呼ばれる指標を用いた所得分配の不平等を測る統計手法を開発します。具体的には、母集団(全国)のGEと、その各部分母集団(地域など)のGEとを、同時に推定する手法を開発します。GEには分解可能性という性質があり、母集団のGEは、各部分母集団のGEの荷重和(群内不平等)と、部分母集団の平均のGE(群間不平等)との和に等しくなります。この性質によって、母集団全体の不平等に対する寄与度の分析ができ、財政政策などの所得分配に関する重要な政策的含意が得られます。

一方で、このような分解に整合的な推定値を標本から得るための従来の統計学的方法は、部分母集団への分解が細かくなればなるほど、上手く機能しなくなります。日本の例では、全国は約1900もの市区町村に分けられるため、従来の手法では適切な推定結果を得られません。そこで、従来手法の欠点を克服するような、新しい手法を開発します。まず、全国と部分母集団それぞれに、サンプルサイズに応じた適切なパラメトリックな確率分布を仮定します。次に、その確率分布たちのパラメータを、GEの分解に整合的になるよう制約を課した上で、事後リスク最小化問題を解きます。このような統計手法は、制約付きベイズ法と呼ばれます。得られた推定値は、その構成法から分解に整合的な上、従来手法よりも、母集団と部分母集団両方のGEの推定が効率的になることが期待されます。

提案手法を日本のデータに適応し、日本全国の不平等を、都道府県内不平等と都道府県間不平等に分解します。さらに、各都道府県の不平等を、市区町村内不平等と市区町村間不平等に分解し、不平等の寄与度分析を行います。

地域間不平等と地域内不平等の寄与度分析のための統計手法開発
2018年住宅・土地統計調査の世帯所得データにもとづいた都道府県別GEの推定値のコロプレス地図
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