移民難民の社会統合に向けた参加型アクションリサーチ:教育と福祉を中心に
-
- 研究責任者
小川 玲子 教授 / Reiko OGAWA
- 所属
千葉大学 大学院社会科学研究院
Researchmap
- 研究責任者
近年、人手不足を背景に外国人労働者に対する依存度は高まっていますが、外国ルーツの子どもの教育と家族の福祉については多くの課題があります。本研究でフィールドとする千葉県は、日本で6番目に外国人数が多いにもかかわらず、共生へ向けた取り組みはまだ始まったばかりです。
研究チームが実施した千葉の移民コミュニティに対するアウトリーチ調査では、移民コミュニティは地域社会とのつながりが薄く、公教育や福祉へのアクセスに多くの障壁があることがあきらかとなりました。また、日本社会の管理や秩序の維持に都合のよい「支援」が施されており、既存の枠組みに当てはまらない移民当事者の声は不可視化される傾向にありました。
そこで本研究では、移民当事者の参加による参加型アクションリサーチの手法により、研究者と移民当事者がともに課題を明らかにして関係者と共有することで、これまで捉えきれなかった課題への具体的な対応策を提示します。参加型アクションリサーチは、研究者によって独占されてきた「知」の主体を変革し、通常拾われにくい「小さな声」を聞くことや、当事者のエンパワーメントを通して公正な社会の実現を目指すもので、教育や福祉分野で発展してきた実践手法です。
「日本社会が移民のためにつくる多文化共生」から「移民が主体的な構成員となる多文化共生」 へと視点の転換を行うために、地域と移民家族をつなぐ拠点となり得る小中学校や高校をフィールドとし、移民コミュニティにとって機能し得る社会関係資本の醸成や、当事者と当事者をとりまく環境の関係性の変容を目指します。
千葉において①調査→②研修→③フィードバック→④問題解決に向けたアクションを複数の地域で実践し、移民コミュニティと地域コミュニティとの双方向の変容を伴ったつながりを構築し、多文化共生に関する学術的社会的貢献を行います。