2型自然リンパ球の多様性と臓器特性から切り開く新たな糖尿病分子基盤と創薬への応用
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- 研究責任者
田中 知明 教授 / Tomoaki TANAKA
- 所属
千葉大学 大学院医学研究院
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ORCID ID
- 研究責任者
「2型自然リンパ球 (ILC2)」は、喘息やアレルギー反応などの病態に関与することが知られています。しかし近年、脂肪組織や動脈硬化での代謝改善作用に関与するなど、「多面的な病態生理作用」があることが明らかにされており、注目を集めています。
研究チームはこれまでに、肝臓が多くの免疫細胞を含んでいること、また、腸管からの外界抗原や高濃度の栄養素(代謝メタボライト)が流入するインスリン標的臓器である点に着目して研究を発展させてきました。その結果、肝臓に存在するILC2が、免疫系において重要な細胞間情報伝達物質であるIL-13を介して糖の放出を抑制し、血糖を低下させる作用を持つことを明らかにしました。しかしながら、ILC2の臓器ごとの多様性とその背景にあるメカニズム、特に「何故肝臓にあるILC2が、糖代謝改善作用を持つのか? その仕組は?」という疑問については、未だ明らかになっていません。
本研究では、肥満や糖尿病と関わりの深いインスリン標的臓器(脂肪・肝臓・筋肉)、特に肝臓に着目して、シングルセル解析と一細胞間相互作用解析、およびILC2における核内の転写メカニズム解析を用いて「2型自然リンパ球の多様性発現機構と臓器特性の解明」を目指し、その研究成果を糖尿病の新たなコントロール方法の発見や創薬開発につなげます。
また、シングルセルマルチオームと空間的トランスクリプトーム解析を中心に、臓器・動物モデルのin vivo代謝FluxとILC2のGATA3転写複合体解析を組み合わせて得られたマウスの知見をヒト肝臓・脂肪組織で検証し、転写複合体ネットワークから捉える免疫―代謝連関の新しい制御メカニズムと、それに基づく新たな創薬シーズの提唱を目指します。